カリフォルニアのソノマでワイン醸造に携わって早くも15年。「日本人醸造家の悪戦苦闘!」を綴ったワイン日記


by kissouch
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高アルコール



5年以上前のことだが、私の知り合いのグレッグ(仮名)がカルトワインを目指している新しいワイナリーのワインメーカーとなった。そのワイナリーのオーナーは他の仕事で財を成したビリオネアーである。お金は有り余っているので、採算度外視でそのワイナリーを自分のステイタスにしたかったようだ。
(私たちのレベルでは、「小金が貯まったのでメルセデス・ベンツを買う。」といったところだろうか。)
で、その契約の内容は、というと、とても細かく、、、というよりも、彼の話を聞いていると滑稽だった。
たとえば、そのワイナリーのシャルドネがワインスペクテイターで92点以上取れば彼のオフィスに40インチのプラズマTVを据える、という条件だ。ほかにも、カベルネ95点以上で何々、メルロー92点で何々と。
思わず笑ってしまいそうになったが、彼のやる気満々な姿を見て堪えた。

このようなパターンが多々ある。
医者、弁護士、コンピューター関係者がワイナリーを始め、高得点を取ることを条件にグレッグのようにアンビシャスのあるワインメーカーを高給を払って雇う。そして、彼らがどのようなワインを作るかというと、当然、パーカーjrやスペクテイター好みのリッチなハイアルコールワインである。
こういったワインメーカー達は高得点を取ることのみがプライオリティーなので、出来上がったワインが社会にどのような影響を与えるか?など到底想像もつかない。

その一方で、高アルコールに批判的な、このようなワインメーカーもいる。
2年ほど前のことだと思う。
ワインメーカーは流行のワインだけを作っていれば良いのではなくて、社会的な責任を自覚してワイン作りをしなくてはならないと、某ベテランワインメーカーから諭された。

社会的な責任??

つまり、ワインはアルコール飲料なので、飲み方によっては消費者に重大な影響を与える。
アルコール量が1%増すにつれ、脳の反応が何分の一秒遅れるとか、アルコールには睡眠作用があることとか、、、、このようなことを考慮しなければならない。 たかが1%と、侮ってはいけない。そのためにどれだけ多くの人が飲酒運転事故の犠牲になっているか考えなければならない、と。
そして彼は続けた。彼の楽しみは、親しい友人達と、良いレストランに行って、美味しい料理を食べ、美味しいワインを飲むことだ。
(ワイン好きなら誰にでも当てはまることだろう)
レストランでは、ワインは脇役でなければならない。ワインは料理を引き立てなければならない。というのも、ワイン業界にとってレストランは1番の「お客様」だからだ。しかし、アルコール度の高いワインは料理を限定してしまう。 マリアージュがうまくいかない。
また、ワインだけが目立ってしまうとレストランサイドの機嫌を損なうこともある。強いては、レストランで食事をした人が「料理が不味い。」と錯覚する恐れもある。こういったことは、ワイン業界全体の損失である、と。

なんだか、とってつけたような理屈ではあるが、パーカーjrやスペクテイターに KISS ASS するワインメーカーに比べれば好感が持てる。
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by kissouch | 2007-09-13 06:51 | 余談