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カリフォルニアのソノマでワイン醸造に携わって早くも15年。「日本人醸造家の悪戦苦闘!」を綴ったワイン日記


by kissouch
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5)ワインの火入れ/Pasteurization

ワインの再醗酵 1

もう20年も前になるだろうか。ワインに興味を持ち出した頃、あるワインセミナーに参加した。少々下品な話だが、講師は「イーストが糖を食べてオシッコ(アルコール)とオナラ(CO2)をする。」 と言っていた。そうすると、少し話が落ちると活気づく輩がでてきて、「イーストのウンコはどうなるの?」と質問して笑いを取っていたたが。(本当に。)
ワイン好きな方なら、少しフレーズが違っていてもこういった話を聞いたことがあると思う。しかし、実際はイーストが糖を食べるのではない。イーストは果汁内から栄養分を補給し、それを糧にして”働く”。つまり、糖を分解して、エネルギーを取り出す仕事をする。(エネルギーを取り出す理由はまた後日に述べる。) そのときのバイプロダクトがアルコールとCO2である。(単純な話のようだが、化学式で見るとかなり複雑な過程である。) 
イーストにもいろいろな種類があるが、私たち人間に例えることもできる。日本人のように勤勉に働いてくれるとワインメーカーはいらないが、どこかの国民のように不平不満ばかり述べて働かないイーストもいる。食料がない、暑すぎる、寒すぎる、・・・・・・と。そのため、ワインメーカーは彼らの生活環境を整え、食料を与える。それで満足して仕事を最後まで終えてくれれば良いが、中には無責任で仕事放棄をするイーストもいる。そのため、ワインメーカーはイーストの仕事が終了したかどうか、精密検査する必要がある。一般的には 1.2g/L 未満の糖度なら醗酵が終了したと言える。つまり、この数値より低い糖度では、再び醗酵がおこる可能性はない。反対に、この数値より高ければ、再発酵が起こる可能性を秘めている。

要するにここがポイントで、1.2g/L未満のレベルではイーストを恐れる心配はないのである。(2)ワインの火入れ/Pasteurization 参照) 

中には分析せずに、自分の舌で判断するワインメーカーもいる。(現代のワインメーキング・テクニックが確立される以前は全て”舌”が主流であった。)しかし、人間の舌はいい加減なもので、過信すると痛い目に遭う。(私も一度痛い目にあったことがある。) 甘さを感じないから醗酵が終わったと思っても、残糖度が高いときがある。そういう時に再醗酵のリスクを残したまま瓶詰めすることになる。(もし、残糖度が高いことがわかっていれば、フィルターでイーストを取り除けば良いのであるが、悲しいかなそれを知らないで瓶詰めするワインメーカーもいる。)

現代でも瓶の中で再醗酵したワインを見るが、パスツールの時代は沢山あっただろう。

(1.2g/Lは絶対的な数値ではない。安全な数値は、ワインの種類によっても異なるし、またデーヴィスやローカルラボによっても異なるが、だいたい1.2g/Lに近い数値だ。 私のワインは、すべて0.5g/L以下になるように発酵させている。)


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by kissouch | 2006-05-09 03:30 | ワイン醸造/vinification