人気ブログランキング | 話題のタグを見る

カリフォルニアのソノマでワイン醸造に携わって早くも15年。「日本人醸造家の悪戦苦闘!」を綴ったワイン日記


by kissouch
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

ワインの火入れ/Pasteurization

先日、日本のソムリエさんから「ワインに”火入れ”をしているのかどうか,教えてほしい」 と、メールが届いた。最初「ワインの”火入れ”」の意味が分からなかったが、日本酒の醸造技術である“火入れ”がワインにも使われているのか、ということだった。ワインではパスツリゼーション(パスチャリザシオン=フランス語ではこのような発音だったかな?)と呼ばれているが、こちらでは耳にすることはほとんどない。つまりカリフォルニアでは99%使われていない。その理由を完全に説明するには時間がかかるので、要約をQ&Aで書く。

1)パスツリゼーションとは?
19世紀の中頃、パスツールが考えた殺菌方法。
約60℃にワインを熱し5分ほど保つ。
現在ではミルクとか乳製品に使われている。

2)パスツールの殺菌方法は正しいのか?
現在では、ワインを99%殺菌するには約80℃以上で3分必要といわれているので完璧とはいえない。

3)何故カリフォルニアではパスツリゼーションを使わないのか?
温度の感覚から考えてみよう。風呂の温度は40℃ぐらいが理想だろう。45℃ともなれば手もつけられないほど熱い。60℃というのは猫舌の私にはお茶にしても熱すぎる温度だ。そこで60℃となったワインを想像すると。。。。。とても私にはできない。ワインのデリケートな風味はすべて失われるし、変色もおこる。勿論味も変わる。正と負を考えた時、遥かに負の方が大きい。

4)それではワイン中の雑菌はどのように処理するのか?
ワインにもいろいろ種類があるので一概にはいえない。ここでは一般的な赤のプレミアムワインについて述べる。
まず最初、自分のワインの中にどういった微生物が存在してるか把握する。ワインの残糖度、リンゴ酸レベル等を考慮して、どのように対処するかを考える。その後は各々ワインメーカーの判断と器量と“度胸”だ。
もしワインメーカーがイースト(酵母)を取り除きたいときはボトリング時に0.8マイクロンあるいは0.65マイクロンのフィルターを使う。(0.8か0.65はイーストの種類によって使い分ける)
バクテリアを取り除きたいときは0.45マイクロンのフィルターを使う。
ちなみに私のワインはアンフィルターである。

5)フィルターの弊害は?
目が細かいのでワインの旨味となる一部の要素も取り除かれる、と言われている。

6)火入れを使っているワイナリーはあるのか?
新世界のワイナリーではほとんど無い。
日本ではまだ使われているようだ。
私の知り合いの日本の醸造家は「使いたくない」って言っていたが、使わなければならない事情があるらしい。
旧世界では。
“火入れ”にはヒートエキシチェンジャーを使わなければならないが、フランス在住時にそれらしき機械を見たことは無い。しかし安いワインを大量に生産している大きなワイナリーでは使っていると聞いた覚えがある。

7)”火入れ” とフィルター、どちらを使う?
要するに、ワインメーカーが自分のワインに確固とした自信を持っていればどちらも使う必要がない。しかしどうしても微生物をワインから取り除きたければ、ワインを傷めないためにも、殺菌の確実性のためにもフィルターを使うのが妥当だろう。

・・・・・・・・・・・無断転載はお断りします・・・・・・・・・・
by kissouch | 2006-03-24 13:45 | ワイン醸造/vinification